大判例

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広島高等裁判所 昭和26(う)231 高裁判例

主 文

本件控訴を棄却する。

理 由

検事今井和夫の控訴趣意は記録編綴の同控訴趣意書記載の通りであつて茲に之を

引用する。

第一点 原判決は事実誤認の違法があるというのであるが原判決が詳細に判示し

ているように拠示の挙拠により判示の如く認定したことは条理及経験則上是認せら

るゝところであつて仮令所論の如き反対証拠が存在するとしても原判決がこれを排

斥したことはその自由裁量に基くもので何等違法ではない。論旨は理由がない。

第二点 原判決は法令の適用に誤りがあるというのであるが喧嘩闘争の場合は如

何なる場合でもその行為に対し正当防衛に関する刑法第三十六条第一項の適用なし

とはいえない。要はその闘争の全般からみてその行為が法律秩序に反するものであ

るか否かによつて定まる。

<要旨>本件被告人の所為は被害者Aが飲酒の上乱暴するのを取静めようとして偶

々喧嘩になつたもので被告</要旨>人は相手方に危害を加えようとしたのではなく被

害者Aが被告人にナイフを以て危険を加えようとしたので其の手を掴えたところA

がその手を掴んだから被告人はこの急迫不正の侵害に対し自己の身体を防衛するた

めに已むなく右Aの口に左手を入れ噛んだ口を離させようとした際被告人の左手の

爪がAの口の右端から右頬に当り判示の如き創傷を生ずるに至つたものであること

が判示被告人及証人の供述並に原審公判調書中証人Bの供述記載により認められ

る。かゝる場合に被告人のとつた敍上の如き防衛行為が法律秩序に反するものとは

いえない。然らずして相手方の危害に任せなければならないというは条理上到底是

認し得ない。原判決が「かゝる場合における被告人のかゝる所為は刑法第三十六条

第一項の正当防衛として認容すべきである」と判示したのは正当である。論旨は理

由がない。

仍て刑事訴訟法第三九六条により主文の通り判決する。

(裁判長判事 柴原八一 判事 秋元勇一郎 判事 高橋英明)

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